2011年9月4日日曜日

書評7: インシテミル(米澤穂信著)

定期的に流行してる感のある密室でのサバイバルゲームもの。
本作では、12人の男女が破格の高給バイトにつられて参加し、
疑心暗鬼になっていく様子と驚愕のラストが読者を待つ!って感じ。

この手の作品は、読み進みながらからくりやトリックなんかを考えながら読めるので、
個人的には割と好きなジャンルだし楽しんで読める。
ただ、登場人物の設定や心理描写に納得できず引っかかる部分があると、
それだけで途端に作品全体の面白さが減退してしまう。
本作の場合は、主人公ののんきさの描写、登場人物の鈍感さと
劇中で発生する殺人の血なまぐささの対比が非常に不自然に感じた。

自分もそうだが、多くの人は他殺体なんて滅多にお目にかかるものでもないだろうし、
ある程度予想された事態とは言え、ぽんぽん周囲の人が殺される状態
(そして自分が殺されるかもしれない状態)で、正気を保っていられるものだろうか?
まぁ、平静を失って混乱する参加者続出では、推理小説としての面白みがなくなってしまうが・・・。
人によってはこういう淡白な物語運びの方が好き、という人もいるだろうから、
どれくらいの感情表現の粘度を好むかは個人の嗜好の問題かもしれない。

それと、作中の番人ロボ(?)がいかにも物語の辻褄合わせのために作られた存在の様に感じられた。
いや、実際そうなんだろうけども・・・。尚、自分の頭の中ではこのロポットは「強面のコロ助」でした。

本作は映画化も既にされているようだが、当然見ていないし今後も特に見たいとも思わない。
独断と偏見に基づいて評価すれば、「長い休みや旅行の前に図書館の書棚で見つけた」などの場合は
借りて(買うまでもない)読んでみてもよいのではないだろうか。

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