2009年7月8日水曜日

書評4 偽装通貨

著者: 相場英雄 (東京書籍)

社内政治のゴタゴタで消費者金融から解雇された元キレ者銀行員が、偶然知り合ったその道の達人や
それまで培ってきた人脈を駆使して違法すれすれの新ビジネスを立ち上げる。
一方、キャスター志望のフリーアナウンサー田尻は、周囲の協力を得ながら法の網目をすり抜ける
”偽装通貨”の取材を深めていく中、より深い裏の世界に引き込まれていく。
そんな両者の背後で、国際紛争、最新鋭兵器の非合法取引をからめた危険な組織がうごめく・・・。

とまぁ大筋はこんな話ですが、読中は勿論読後まで残った違和感を列挙してみます。

違和感①
主人公の一人、フリーアナウンサーの田尻倫子(たじりりんこ)の綽名が「ダージリン」。
・・・ギョーカイではリアルにこういう綽名で呼んだり呼ばれたりしてるんだろうか?
綽名の由来、背景(ダージリンティーが好きとか)の説明などが一切ないのも、何となく暑苦しい感じがする。

違和感②
田尻倫子の察しの鈍さ加減が、人物設定に対して度を越している。
齢30になろうとしいてマーケット関連の番組のレポーターを務めており、取材も出来るキャスター志望なのにも関わらず、
「市ヶ谷の関係」(防衛省ってこと)程度のスラングも言われるまで理解できないなんてマジすか?
その他にも、国家からの圧力や社内政治に対する反発の仕方が、良くも悪くも青臭すぎる。
社会の汚れをまるで知らないうぶな新入社員の様だ。
読者への説明を兼ねるために敢えてこういう役を振っているのかもしれないが、
こんなにものを知らない無邪気なマスコミ人がいるんだろうか?

違和感③
最終局面で、恋人の命と悪事への加担をはかりにかけられ脅迫される主人公(椎名)に対し、
「絶対にダメ!」と悪事への加担を拒否(=恋人の見殺し)を声高に迫るダージリン(田尻)。
危険が去った後も、結果的に恋人の命をチョイスした椎名を何度も「最低」呼ばわり。
社会正義が大事なのはごもっともだけども、自分が殺されそうだった時はビビりまくりで震えてたのに、
目の前の他人の命はどうでもいいですか、そうですか。

違和感④
スマトラ沖地震の話のつながりがあんまり必要と思えない。
話の中で伏線やいらなそうなエピソードがあっても、それをそう感じさせては
話の中身に没頭出来なくなってしまう(端的に言うとつまらなくなる)。


田尻さんケチョンケチョンにけなす結果になってしまいましたが、嫌いな訳ではないです・・。
最後まできちんと読めたので、どうしようもなくつまらなかったり、論理的に破綻している訳でも決してないです・・・・。

本編とは関係ないが、参考文献のところで「サンクチュアリ」by史村翔、池上遼一 を見つけた時は驚いた(笑)。
終盤登場する893はあの漫画を参考にしたのだろうか?もうちょっと他にいい資料あるんじゃないだろうか・・・。
それとも単純に著者が好きなだけだったりして。

0 件のコメント:

コメントを投稿